【Report】静岡大学 石川研究室(静岡)

 

静岡大学 石川研究室
2024年の聴き手
愛媛大学医学部 Children Supporters

静岡大学 石川研究室
2024年の聴き手
愛媛大学医学部 Children Supporters

このページの内容

石川研究室について

静岡大学教育学部で特別支援教育を学んでいる学生がゼミ活動の一環として、病気療養児を支援する活動を行っています。

「石川研究室」をあらわすキーワード

団体の概要

Q.団体名は?

正式名称:静岡大学 石川研究室です。

所属は静岡大学教育学部 学校教育教員養成課程 特別支援教育専攻で、指導教員は石川慶和先生です。

Q.設立年は?

2012年です。

Q.活動地域は?

静岡県です。

学生メンバーについて

Q.どんな学生メンバーがいるの?

3年生3人、4年生4人です。(2024年現在)

活動の紹介

主な活動

Q.具体的な活動内容は?

静岡県立こども病院と連携して、主に5つの活動に取り組んでいます。

1.学習支援
①概要

・対象:静岡県立こども病院に入院している小中高生
・頻度:週1〜3回、1回あたり1〜2時間、日中など

対面やZoomで個別に学習支援を行っています。行う科目は本人と保護者の要望に合わせて決定し、病弱学級の宿題や前籍校の問題集などを行っています。

②入院している子ども達について

入院している子どもは手術前後の子どもが比較的多く、慢性疾患の子どもは少ないです。

③学習支援方法

医師、メディカルソーシャルワーカー、事務職員などと大学生が連携・情報共有を行い学習支援を行っています。

学習支援を行う子どもは多種多様で、短期の子が多く年齢としては高校生が多い印象です。

1ヶ月以上の入院でなければ 病弱学級に入ることができないという背景から短期の子はZoomを使った非対面形式の学習支援を行っています。

決められた研修や報告レポートなどは特にありませんが、授業で学んだことや先輩から引き継いだことを参考に学習支援を行っています。

④入院している子どもたちの対応や工夫している点

病弱学級に通えていない子どもに関しては、大学生が授業の空きコマを活用して、その時間に学習支援を行っています。また、保護者との関わりは多く、Zoom先でその子の保護者が隣にいることも多いです。

体調が変化しやすい子どもたちと勉強する中で「休むことができた」を大切に行っています。最近は、コロナなどの感染症予防の規制も緩和され対面での学習支援も増えてきました。

病室や病棟内にあるプレイルームという自由に使っていいスペースを使いながら勉強したり、遊んだりしています。

悩み事として「医学的知識が少ないため、体調などの観察に不安がある」というものがあります。子どもたちに「こういう治療でしんどい」と具体的に教えてもらえると嬉しいです。

勉強の様子を看護師に伝えると感謝されるので、病棟に入る前後に看護師に、訪室の際に医師に挨拶をしたりと情報共有をしています。

Zoomで大変だったエピソード
場面緘黙の子にZoomで学習支援をした際にその子の声を聞くことができなかったことがありました。解決案として、その子の好きなものを知って、それを勉強してなるべくお話ができるように努力しました。

対面だったら何か別の対策が取れたかもしれません。Zoomを使うと幼い子は遊んでしまうというのも一つの課題に感じています。

⑤課題

大学から病院が車で30分程度と少し遠いため、移動に課題があります。

また、退院後は学習支援を継続するシステムがないので、突然最終回が来ることもあります。何か退院後もつながり続けることができるような仕組みがあれば良いのになと感じています。

2.夏休み宿題支援
①概要

・対象:静岡県立こども病院に来院している子ども
・頻度:毎年8月のお盆の時期に4日程度

こども病院で診察や検査を待っている子どもたちと一緒に宿題をしたり、遊んだりしています。

夏休みは検査の待ち時間が長くなりやすいため、その待ち時間が少しでも楽しいものになるようにと思いながら活動しています。

②イベント日の決め方

メディカルソーシャルワーカーの方と指導教官の石川先生が連絡をとり、イベントの日程などを調整してくださり活動しているとのことです。

③これまでの取り組み

こども病院が材料を準備し、うちわ作りなどの工作企画を行いました。兄弟姉妹が検査や診察のため待っている間に遊びに来てくれる子どももいました。

④工夫している点・改善点

当日まで参加者がわからないので、幅広い年齢層に対応するために折り紙を持っていくなどの工夫を行っています。日程調整や広報などをどのように行うかは現在も改善中です。

3.病弱学級支援ボランティア
①概要

・対象:静岡県立こども病院やてんかんセンターに入院している小中学生
・頻度:週1回程度

静岡県立こども病院や静岡てんかん・神経医療センター内に設置されている病弱学級にボランティアに行き、授業の補助をしたり、休み時間に子どもたちと遊んだりします。

入院中といういつもと違う環境の中で不安な気持ちを話してくれる子どもたちもいるため、その気持ちに丁寧に寄り添うことを大切にしています。

②活動者の声

小児がんの子どもが多いため、文房具の消毒を徹底するなど衛生面への配慮を厳格に行っています。簡単なカードゲームが人気でUNO、トランプ、人生ゲームなどを使って子どもと遊んでいます。

4.読み聞かせボランティア
①概要

・対象:静岡県立こども病院に入院している子ども
・頻度:週1回程度

入院中の子どもを対象に、寝る前の読み聞かせを行っています。
寂しい気持ちを少しでも緩和できると良いな、と考えながら活動しています。

一部の病棟は保護者の添い寝が許可されていますので、保護者の要望によって活動したり、看護師の要望で対象の子どもが決まったりします。読み聞かせだけでなく、お話をしたり折り紙を行ったりすることもあります。

※面会制限があり、保護者の添い寝が許可されていない病棟もあります。

②活動者の声

コロナ禍に保護者が病棟に入れないタイミングなどでは、入院中の子どもの不安を軽減するために活躍しました。
保護者の方も患児の兄弟姉妹のお世話や家事など、常に病院にいられる訳ではないので、家族を助ける活動にもなっています。

日中に活動しているボランティアもいれば、夜の19時から21時に活動している人もいます。就寝までの時間は、デイルーム等で遊んでから読み聞かせを行うこともあります。

面会制限緩和後も「親以外ともかかわってほしい」と保護者から依頼があり、保護者が一緒にいる状態で読み聞かせを行うことがあります。

ベッド上の好きなキャラクターの掲示や実習生と作った作品などは、その子の色が出ている貴重な情報で、保護者との会話の種にもなっています。

子どもだけで寝ることは少なく、保護者がいる前提で活動を行っているため、保護者との関わりも大切にしています。

5.心臓病児キャンプ

・対象:心臓病の子ども&きょうだい(基本的に保護者同伴)
・頻度:毎年8月

「心臓病子どもの集い こぐま園」が主催しているキャンプにボランティアとして参加し、2日間こぐま園の在園児や卒園児と一緒に牧場のソフトクリームを食べに行ったり、野菜収穫体験をしたりと様々な活動をします。

心臓病の子どもだけではなく、きょうだい児も参加するので、きょうだい児支援について考えるよい機会になります。

※「きょうだい児」とは、障がいのある兄弟姉妹を持つ子どものことです。

対象の子ども・活動場所

Q.どんな子どもたちと、どんな場所で関わっているの?

静岡県立こども病院で小児がんや心臓病をはじめ、外傷による治療やリハビリのために入院している子どもなど幅広い病気の子どもたちに学習支援を行っています。

活動場所は病棟をはじめとして、プレイルームや自習室、待合室など様々です。

これまで実施したイベント

Q.これまで実施したイベントは?
  • 学習支援
  • 夏休み宿題支援
  • 院内学級でのボランティア
  • 心臓病児キャンプボランティア
  • 読み聞かせボランティア

石川研究室の特色

連携している団体・応援してくれる先生方

石川慶和先生

静岡大学教育学部特別支援教育専攻の准教授です。主に特別支援教育の病弱領域を専門とされています。石川先生の趣味は写真撮影、映画。好きなものはコーヒーです。

ゼミの特徴として、各々が好きな活動に参加していることが挙げられます。ランチタイムに、それぞれのボランティアで出会ったかわいい子やおもしろかったエピソードなどの話をして盛り上がっています。

団体の特徴 

「休むことができた」を大切に

「休むことができた」を大切にしています!病気療養児は治療等により体調が優れないことも多いため、学習空白が生まれることに不安を抱えますが、その中で「勉強できなかった」ではなく「休むことができた」とポジティブな考えを子どもたちと共有しています。

これからについて

多くの学生に参加してもらいたい

静岡県立こども病院のSWさんのご協力もあり、学習支援の依頼をたくさん頂いている状況です。そのため、石川研究室の学生だけに留まらず、他の研究室の学生にも学習支援の活動を知ってもらい、多くの学生に参加してもらえたら嬉しいです(^-^)

学生メンバーへのインタビュー

Q.この活動をしようと思ったきっかけは?

もともと熱烈な興味を抱いていたわけではではありませんが、親が看護師であるということや、友人に病気を抱えている方がいてそのことについてもっと理解があればうまくつきあえたのではないかという思い、生き方を教えてあげられる教員になりたいという思いなど、個々が何らかのきっかけからこの静岡大学教育学部特別支援専攻に進み、活動をしています。

元々特別支援教育の中でも病弱に興味があり、3年次に石川先生の研究室に入りました。

学習支援は石川先生からのご紹介によるものですが、毎回子どもたちと学習を通して関係を築いていくことを楽しみに活動させて頂いています!

Q.学習支援の紹介や日程調整などはどのようにして行っていますか?

メディカルソーシャルワーカーの方と指導教官の石川先生が連絡をとり、イベントの日程などを調整してくださり活動しています。

メディカルソーシャルワーカーさんが全ての窓口になってくれていて、学生にとってやさしい保護者のような存在です。

Q.どうしても勉強に向かってくれないとき、どういうことをしますか?

「小児がんの治療が辛くていやだ」などと勉強になかなか気が向かない子も確かにいます。

そんな時は遊んでお話しするだけというのもありだと思います。廊下を歩いてみたりデイルームに行ってみたりしたら、気持ちが変わったり、本当はこれがやりたいといった本当の気持ちを引き出せたりすることがあります。

このようなときはこちらが勝手に子どもが勉強したくないと決めてしまっているのかもしれません。

「ここだけ終わったら遊ぼう」など、できそうなギリギリの目標やゴールを決めたりするとスムーズに勉強に向かうことができることもあります。好きなもので関心を引き寄せるというのも一つの手です。

Zoomを使った非対面形式の学習支援ではなかなか話してくれない子もいるので、そういったときは保護者が「今日はお話するだけにする?」と言ってくださると非常に助かりますが、そうでないときは少し困ることがあります。

「その場で答えが瞬時に出てこなくてもいいよ」と声をかけるなど相手の気持ちをリラックスさせてあげるのもいいかもしれません。

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