【Report】大阪教育大学 西遊子(大阪)

大阪教育大学 西遊子
2024年の聴き手
昭和大学 ボランティアサークル さうもす

大阪教育大学 西遊子
2024年の聴き手
昭和大学 ボランティアサークル さうもす

このページの内容

西遊子について

「ともにいる、その時間が治療を支える力になる」
~病気の子どもたちや家族に寄り添い、
遊びや学びを通じて心をつなぐ~

大阪教育大学の特別支援教育専攻の学生たちが、中心となって病院の子どもに向けて支援を行っています。

「西遊子」をあらわすキーワード

団体の概要

Q.団体名は?

正式名称:大阪教育大学 西遊子です。

日本の西の方で、病弱教育に関心のある学生が、病気の子どもやその家族と関わる機会を作り、病気の子どもの遊びや学びを支える活動をしたいという思いから西遊子は作られました。

中国の有名な物語「西遊記」のオマージュで、孫悟空や三蔵法師など、一人ひとりの個性を生かして、力を合わせ、冒険を乗り越えて目標に突き進もう、そんな歴史に残る活動をしたいという思いから「西遊子」という名前のボランティアが誕生しました。というのも、半分冗談らしく、実際にはみんなで話している中のノリで決まったそうです。そんなユーモア溢れる学生が活動しています。

Q.設立年は?

2010年10月です。

Q.活動地域は?

大阪の病院です。

学生メンバーについて

Q.どんな学生メンバーがいるの?

約25人です。(2023年現在)

活動の紹介

主な活動

Q.具体的な活動内容は?

病院内で、外来の子どもたちと病院で折り紙や工作をしています。
夏休みなどの長期休みに、子どもたちが持参した宿題を教える学習支援の活動もしています。

  • てらこや
  • 小児病棟でのワークショップ
  • AYA病棟での学習支援
  • 子どもホスピス
  • きょうだい支援

病院で外来の子どもたちを中心に月に1度、折り紙や工作をして活動をしています。

対面で活動している場所とZoomでつないで、オンラインと対面で同時に活動し、授業などで現地に向かう時間がない学生がZoomを活用しています。

以前は、入院をしている子供たちを対象に活動していたましたが、新型コロナウイルスにより、病院内の規制が厳しくなり、外来の子どもたちと交流をしています。また、余った工作キットを入院している子どもたちに渡して遊んでもらっています。

今後は外来の子どもだけでなく、病院内で療養中の子どもたちとの交流をすることやオンラインでの活動を減らして対面の活動を増やしていくことを検討しています。

対象の子ども・活動場所

Q.どんな子どもたちと、どんな場所で関わっているの?

外来を受診する子どもやそのきょうだいです。

これまで実施したイベント

Q.これまで実施したイベントは?

西遊子の特色

連携している団体・応援してくれる先生方

平賀 健太郎先生

大阪教育大学 教育学部 特別支援教育部門 教授。博士(心理学)。一般社団法人 日本育療学会『育療』編集副委員長。

専門は病弱教育。自身の子ども時代に小児病棟や院内学級での生活を経験し、入院中や退院後の病気の子どもたちの遊びや学びを支える教育・研究に従事。小学生と中学生の父。

平賀先生に伺いました

Q. 学生が子どもたちと関わる意義はどんなところにあると思いますか?

先生は子どもたちを指導する存在ですが、本活動における学生は「先生」とは立場が違い、そういった指導をする立場にはなく、”ただ関わる”ということができる存在です。

学生は、子どもたちの行動を評価し指導する必要はなく、ただ共感して一緒にいるということができます。それができる学生との関わりはとても価値があると考えます。

また、学生と子どもだからこそ「何のためかわからないけどめちゃくちゃ楽しい時間」を一緒に過ごすことができ、それは学生だからこそ提供できるものだと思います。

病気療養中の子どもたちの学びの場をつくっていくために、取り組むべきこととしてどんなことが挙げられますか?

今後より広く病弱教育を広げていくためには、病気のある子どもたちが勉強をするというイメージをもっと持ってもらわなければなりません。

学校の先生や学生に「子どもの病気としてイメージするものは?」と問うと、回答として風邪やインフルエンザなどの急性疾患が多く返ってきます。そのような急性疾患にかかった子どもたちが勉強をするというイメージは持ちにくく、病気が治ってからやればいいという発想になりやすいため、病気の子どもが教育を受けるというそもそものイメージを持ちにくいのではないかと想像します。

そのため、現職の教員も病気の子どもに勉強を教えるという発想は持ちにくいのではないかと思います。しかし、現実として、私が関わっている子どもたちには、学びを求めている子もいますし、学べることに感謝をする子どもたちもいます。

「病気の子どもたちにも勉強は必要ですか?」という根本のところから、いろんな方と一緒に考える機会をつくっていきたいと思います。病気という言葉が示す範囲は広く、急性疾患だけでなく慢性疾患も含まれるので、病気の子どもたちが勉強をする・教育を受けるというイメージがもっと多くの人に広まれば、病弱教育も世の中により浸透するのではないかと感じています。だからこそ、西遊子メンバーのように病気の子どもの教育に関心を持ってくれる学生がいることは嬉しく、大きなことだと感じています。

団体の特徴 

病院内に留まらない活動範囲

現在「てらこや」を中心に活動していますが、コロナ禍の前はAYA病棟での学習支援や小児病棟でのワークショップ、子どもホスピスでも支援活動を行っていました。活動拠点が病院だけではなく、地域の様々な場所で、幅広い年代を対象に活動しているのは西遊子の一つの特徴です。

復学支援

現在の研究活動の中核をなすテーマが「復学支援」です。復学とは、入院していた子どもが元の学校に戻ることを指します。入院中の子どもたちは、早く元気になってクラスメートと遊んだり、勉強したりすることを励みに頑張っています。ただ同時に、自分が忘れられていないか、居場所はあるのかという不安も強く抱いているのです。

これからについて

これからやっていきたいこと

もともとは、西遊子は入院中の子どもたちに遊びを提供する団体であったので、やはり病気で入院している子どもたちに遊びや学びを提供したいと考えています。

今の活動としては月に1回、子どもたちと工作をしているのですが、学校の授業で予定的に厳しく、行けない人がいたりオンラインでの活動になってしまう状況にあるので、これからは対面での活動を出来るだけ増やして、より子どもたちと関わる機会が持てるようにしていきたいのが理想です。

他にも、まだまだ西遊子が行っている活動を知らない子どもたちがたくさんいるのでやっていることを皆に知ってもらい、たくさんの子どもが参加してもらえるように活動する日を固定にしたり、告知の仕方も皆に知ってもらえるようにしたりしていきたいです。

学生メンバーへのインタビュー

Q.なぜ、西遊子に入りましたか?

もともと、大学生になる前から色々なボランティアに興味があり、「病弱教育」に興味があったため、西遊子に入ることを決めました。

西遊子での活動で子どもたちと聞いていることが、教育実習や学校インターンシップに活きています。

平賀先生のゼミに入ったきっかけですが、もともと西遊子の活動を知っていたこともあり、病気の子どもと関わるなら平賀先生のゼミかなと思い入りました。

平賀先生のゼミに所属している学生の多くは、西遊子の活動に参加していたので、私もこの活動に携わるようになりました。病弱教育に関しては、副島先生の本を読んで興味を持ちました。

Q.病弱教育とは

小児がんなどの多くの子どもたちが、治療の経過のなかで、長期にわたる入院治療が必要となる時期があり、子供たちにとっては病院がしばらく生活の場となります。

病院が治療の場であるとともに、その子どもらしい育ちの場として捉えたときに、医療とともに学校教育は大きな役割を果たすことになります。小児がんを含めて病気の子どもたちへの教育は、特別支援教育の一環である、「病弱教育」がその中心を担っており、病院で療養中の子どもたちに対しては、病院にある学校で病弱教育が提供されています。

病院の中での教育は、特別支援学校、特別支援学級、訪問教育などさまざまな形態で行われていますが、ここでは病院にある学校と総称しています。

病弱教育では、病気や身体の不調による生活規制を生活の自己規制と捉え、その能力を育成することが重要です。具体的には、運動や安静、食事などの日常の活動において、必要な服薬を守る力や、自分の病気の特性を理解した上で参加可能な活動を判断する力などが求められます。

Q.子どもたちとコミュニケーションをとる上で気を付けていることは?

毎回、同じ子どもとコミュニケーションを取って工作や折り紙を一緒にするのではなく、外来の子どもたちとの交流なのでその場限りの出会いが多いです。そのため、子どもたちが1日だけではなかなか心を開いてくれず、関係を築くのがとても難しいです。

そこで、意識していることは、「自分から積極的にコミュニケーションを取ること」と「とにかく褒めること」です。

子どもたちは病院に診察に来ているため、緊張していたり、怖がっていたり、不安そうにしていたりとマイナスな気持ち、感情を抱えながら来院する子たちが多いです。

そういう時に、子どもたちが安心していられるように、「大丈夫だよ」などの声掛けを積極的に行い、不安を少しでも無くそうという意識をしながら子どもたちとコミュニケーションを取っています。

不安や緊張から固まってしまっている子どもたちに対しては、外来の子どもたちなので保護者と一緒に来ている子たちが多く、そのときは保護者を巻き込んで一緒に活動をしてもらうということを心掛けています。

小さい子たちだと、どうしても想定していた活動に対して、少し難しかったりすることが多いのでそういう場面でも保護者に手伝ってもらっています。

診察目的で来た子どもたちのご兄弟は、兄弟の診察の待ち時間には1人で待機しなくてはならない子もおり、暇を持て余すことがないように積極的にコミュニケーションを取りにいっています。

特に1人でいる子どもには、とにかく不安にならないようにその子に寄り添いながら関わりを深めています。

一緒に折り紙で遊んだり、工作をする際も、こちら側から「これやろうよ」などと押し付けるのではなく、子どもたちの自主性を尊重し、子どもがやりたいことをやれるように、そして、楽しくできるようにこちら側が声掛けをすることを意識して子どもたちとコミュニケーションを取っています。

学生がいることで、子どもたちがちょっと安心できる場所になれたらなと思っています。子どもたちと気楽に話してくれる関係になれたら、子どもたちも楽しめるかなと考えています。

Q.楽しかったこと、やりがいを感じることは?

診察の待ち時間は、子どもたちにとっても、保護者の方たちにとっても、とても退屈な時間であり、不安な時間でもあります。その時に、「この工作やろうよ」や「一緒に折り紙しよう」などの提案をすると子どもたちは、すごく喜んでくれるし、すごい笑顔で「楽しい」と言ってくれるのでとてもやりがいを感じます。

その保護者の方々にも「ありがとう」と感謝の言葉もたくさんいただくので励みになっています。

最初は緊張していて話しかけても話してくれない子や全然目の合わない子も、一緒に折り紙や工作をしていくことでだんだんと笑顔を見せてくれることや声をかけたら返してくれるようになったりと交流をしていくうちに打ち解けていきます。

子どもたちが最初は不安そうにしていたけど、最終的に楽しそうにしているのを見ると、活動をしてきて良かったと感じます。

嬉しく感じることは、一緒に遊んでいた子どもたちが保護者と一緒に家に帰るときに保護者の方に対して「今日、来てよかったー」と、喜びながら帰るのを見るときです。

病院は、本来「行きたくないなー」と、思って来る子供たちが多いと思いますが、一緒に工作や折り紙を折ったり、交流をすることで「来てよかったー」と思うようになり、病院が嫌な場所ではなくなったと子どもたちが感じるようにこれからも励んでいきたいです。

現在はまだオンラインで活動を行っているため、子どもたちと対面で会うことができず、また、子どもたちの人見知りや緊張もあり、コミュニケーションをとるのがなかなか難しく感じる場面が多くあります。

そんな中、子どもたちが工作してる間にお会計を済まされていた保護者の方より、「子どもがずっとここにいてくれるから助かった」と声をかけてもらったことがあり、この活動をしてる意味があるのかなと思えることができました。

外来スペースで子どもたちと工作をしている時に、保護者に「このようなことをやってくれて助かった」と言ってもらえたり、子どもが最後に手を振ってくれたりすると嬉しくてモチベーションになります。

Q.成長したことはありますか?

子どもたちが工作をするときや遊ぶときに、「子どもたちがどんなことならできるかな?」や「この道具を使ったら子どもたちが危ないよな」など、子どもたちが安全で楽しく、そして安心して遊べるように色々なことを考えながら、一緒に作っています。

そのため、子どもたちの安全性や子どもたちの発達段階に応じて、「何ができるかな?」と、考える力がついてきました。

もともと、自分自身が人とコミュニケーションを取ることや関わりを築いていくということがあまり得意な方ではありませんでした。

しかし、子どもたちは、こちらからコミュニケーションを取り、関係を築いていかないと話しかけてくれない子が多く、そういう場面では自分から積極的にコミュニケーションを取りにいくことを意識して活動してきました。

そのため、こちらから、子どもたちにコミュニケーションを取ることを意識しながら活動を続けていくうちに、話したりするのも最初は緊張していましたが、今では楽しみながら活動することができています。

西遊子は、通常ではあまり関わることの少ない通院してくる子どもたちを対象に活動をしています。そのため、「どんな会話をすればいいか」を考えることや、子どもたちとコミュニケーション取る上で、ポジティブな言葉を使うのが特に大切であり、「すごいね」など子どもたちとの会話の仕方なども理解することができるようになりました。

子どもに向けてワークショップを行うため、例えばハサミを使わないで工作できるようにあらかじめ切っておいたり、のりを使わないで済むように貼った両面テープには剥がしやすいように折り返しを付けたりするということを先輩から学びました。そうやって先輩に教えてもらいながら、「西遊子」ってこういうふうにつくっていくんだと学びました。

このような気遣いや配慮という面に関しては、近い将来、自分が教員になった時にパッと何かを用意するとなった場合も、西遊子で学んだ点については意識が向くようになると考えています。

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