【Report】旭川市立大学 短期大学部 佐藤貴虎ゼミナール(北海道)

 

旭川市立大学 短期大学部 佐藤貴虎ゼミナール
2023年の聴き手
慶應義塾大学 秋山美紀研究会 チルドレンケアラー班

2024年の聴き手
秋田大学病児学習サポート ボランティアサークル

旭川市立大学 短期大学部
佐藤貴虎ゼミナール
2023年の聴き手
慶應義塾大学 秋山美紀研究会 チルドレンケアラー班
2024年の聴き手
秋田大学病児学習サポート ボランティアサークル

このページの内容

佐藤貴虎ゼミナールについて

すべての子どもたちに遊びを提供したい

旭川市立大学短期大学部幼児教育学科は、保育士資格や幼稚園教諭免許を取得する学部です。なかでも、佐藤貴虎ゼミナールは「医療保育」を中心に学び、「とらっこちるどれん」という名前で様々な活動をしています。

「佐藤貴虎ゼミナール」をあらわすキーワード

団体の概要

Q.団体名は?

正式名称:旭川市立大学 短期大学部 佐藤貴虎ゼミナールです。
「とらっこちるどれん」という名前で様々な活動をしています。

Q.設立年は?

2006年です。

Q.活動地域は?

実際に子どもと関わるのは北海道が多いです。しかし、YouTubeで動画の配信をしているため全国の子どもを対象としています。

学生メンバーについて

Q.どんな学生メンバーがいるの?

17期生として5人が在籍中です。(2024年現在)

活動の紹介

主な活動

Q.具体的な活動内容は?

週1回授業内でのゼミや放課後に行っています。

  • 遊びの動画(毎月3本)、おたよりの配信
  • ボランティア参加:オペレッタの披露、重症心身障害児施設への訪問
  • 手話歌:手話歌サークルド・レぺ

そのほか、プライベートでも5人と先生で出掛け、楽しく学んだり、仲を深めたりしています。

対象の子ども・活動場所

Q.どんな子どもたちと、どんな場所で関わっているの?

すべての子どもたちです。

幼稚園・保育園に通う子どもたち、病気や障害のあるこどもたち、そのきょうだい/地域の子どもたちだけでなく、全国の子どもたちが対象です。

これまで実施したイベント

Q.これまで実施したイベントは?

佐藤貴虎ゼミナールの特色

連携している団体・応援してくれる先生方

佐藤貴虎先生

旭川市立大学短期大学部幼児教育学科・佐藤貴虎ゼミナールでは、医療保育を中心に学んでいます。

Q.佐藤先生のモットーはなんですか?

「気づいた人はやらなきゃいけない」がモットーです。

他者の視点で物事を見ることは誰もができるわけではない、その人の才能です。思っているからと言って、実際に行動できる人は少ないです。

できる範囲のことでいいから、行動することで世の中は変わっていくと思います。恵まれた環境で学んだ者にはそれなりの責任があることは忘れずにやっていく必要があるでしょう。

例えば、大学祭で売った焼きそばの売り上げは全額寄付したり、コロナ禍では2ヶ月に1回入院児にオンライン配信をする「とらっこチルドレン」という活動を行ったりと、できることから始めていくことを大切にしています。

Q.日々、学生に伝えていらっしゃることは何ですか?

学生はボランティア活動で「学ばせてもらっている側」だということを忘れずに取り組んでいます。

1番問題なのは「やりっぱなし」です。子どもにとっては大切な一時を過ごした人たちなのに、関係が急に断たれてしまうことは、子どもにとって悲しいことです。だから、卒業生もできる範囲でたまにボランティア活動に来てくれることがあります。

自分の想いを言葉にして学生さんに直接伝えることはあまりしませんが、子どもとの関わりの中で出過ぎてしまっていると感じる学生さんに対しては、「一歩引こう」と伝えることもあります。子どもたちの気持ちに寄り添うということは、「やりたい」という想いを汲み取るのと同じように「やりたくない」という想いを汲み取ることも必要になるからです。子どもたちの気持ちの変化に気付くということは保育において重要だと考えています。

Q.佐藤先生が卒業生に期待することは何ですか?

「それぞれが幸せに過ごすこと」です。

自分を犠牲にして無理をすることは支援をする側、される側の双方にとってよくありません。自分に余裕があることで初めて他者の気持ちを受け入れることができるでしょう。「いろいろな自分」を学生の段階で築いておけば、社会人になって1つのことに挫けそうになった時、他の自分が自分を支えてくれます。

だからこそたくさんの人と会ってさまざまな世界を体験してほしいです。まずは自分がしっかり幸せであれば、その先に必ず学んだことが見えてくるようになると思うので、その時にできることをやってくれたら嬉しいです。

団体の特徴 

月刊号「とらちるだより」

私たちは毎月、月刊号「とらちるだより」の発行を行っています。「とらちるだより」を作成するにあたって、特に意識している点が3つあります。

1. イラストで季節を感じられるように

1つ目はイラストです。その月に合うイラストを使用し、目に入っただけで季節を感じられるように意識しています。

理由としては、病気療養中の子どもたちや重症心身障害児は、自由に外出したり外で遊んだりすることができず、我慢を強いられることもあります。そんな子どもたちにも季節を感じて、季節ならではの遊びを楽しんでもらいたいという思いから「季節感」というものを大切にしています。

例えば、1月号ではその年の干支やしめ縄のイラスト、8月号では風鈴、かき氷やアイス、すいかなどのイラストを用いることによって、季節を感じられる月刊号になっています。

2. 内容にも共通性と季節感を持たせること

2つ目に意識している点は、内容にも共通性と季節感を持たせることです。

共通性としては、①毎月の挨拶、②豆知識、③YouTubeで配信している遊び動画のサムネ、④YouTubeとインスタグラムのQRコードの添付を毎月行っています。その中で季節感を大切にするために、毎月の挨拶では、その季節らしい挨拶を行っています。例えば、1月号では新年の挨拶を行っていたり、8月号では暑さや夏の行事に絡めた挨拶を行ったりしています。

また、豆知識もその月々のものを配信しています。1月号では、「お正月」についての豆知識、8月号では「8月のいろいろな日」について紹介しました。

内容を考えるのは虎ゼミメンバー全員で行っていて、同じ学年だからこその、何でも言い合える関係性や価値観の共通性が今の虎ゼミの良さだと思うので、みんなでやりたいことを伝え合い、みんなで意見を出し合って毎月月刊号を作成しています。何よりも、月刊号を見てくれる子どもたちのことを1番に考えて作成している時間が楽しいです。

3.文字にもこだわること

3つ目に、文字にも注意を払って「とらちるだより」を作成しています。

全ての月刊号は手書きで行っており、タイピング等は1文字も使用していません。手書きの方が自分たちの気持ちが子どもたちにも伝わると考えているからです。

子どもたちをメインの対象としているため、漢字と平仮名の使用には注意を払うことはもちろんですが、色の使い方も意識していて、季節感を感じられる色は何か、見ていて子どもたちは疲れないか、色の識別が難しい子どもにとって読みづらくないか、様々な視点から色の使い方に注意して毎月作成しています。

この月刊号は、多くの人の目に触れて、たくさんの子どもたちやそのきょうだいが遊びを通して楽しい時間を過ごしてくれたらいいなという願いから、病棟や学校、施設に掲示するだけでなく、インスタグラムでも配信しています。ぜひ、月刊号をご覧いただけたらと思います!

YouTubeチャンネル「とらっこちるどれん」

「すべての子どもたちに笑顔を届ける」ことを目的に、YouTubeチャンネル「とらっこちるどれん」で動画配信を行っています。地域の子どもたちだけでなく全国の子どもたちにも私たちの遊びを提供したいという思いをもって活動しています。

YouTube動画は、スマートフォンの「CapCut」というアプリを使って編集しています。毎月の誕生日をお祝いする動画や、おりがみの折り方の動画、ペープサートやオペレッタの動画など、様々な内容を取り上げています。私たちが授業で考えて作った紙芝居の動画もあります。

8月は、「~8がつ~ おたんじょうびおめでとう」「おりがみの おりかた 5しゅるい」「かみしばい おひさまミッケ」という動画を配信しました。「こういう遊びなら楽しくみられるかな」と考えながら、病気の子どもたちでも遊べるような内容を投稿しています。

動画編集で工夫しているところは、2つあります。

1つ目は、見やすい色を使うことです。色弱の方も見やすい色合いになるように工夫しています。2つ目は、見やすい字幕をつけることです。

ひらがなの字幕を単語ごとに区切って読みやすくなるように工夫しています。動画の内容は、季節感が感じられる内容をゼミのみんなで話し合って決めています。

いろいろな動画をあげていますので、ぜひYouTubeのチャンネル登録をお願いします!

「オペレッタ」

オペレッタとは、セリフと踊りのある歌劇のことです。学祭や保育所、幼稚園、障害児・者施設で披露しています。去年は、保育園でアナと雪の女王、今年は、はなさかじいさんを自分たちでアレンジしたものを披露しました。

オペレッタを考える際に大切にしていることは、一人一人の性格や長所を生かせるように台本を工夫することです。「この人はこういう性格だから、〇〇いれたら面白そう!」など考えながら台本を作っています。衣装や大道具、背景の絵なども手作りです。

本番に向けて、二か月間、毎日放課後2~3時間練習していました。今年は5人という限られたメンバーでオペレッタをしました。5人という限られた人数で、場面転換の準備をしたり、セリフを覚えたり、声が響くように歌ったりすることが本当に大変でしたが、やりがいを感じました。

ちなみに、オペレッタは「とらっこちるどれん」のYouTubeでも観ることができます。ぜひ、観てみてください!

これからについて

大切にしていきたいこと

現在の虎ゼミのメンバーは2024年で全員卒業し、幼稚園や認定こども園に就職します。そのため、今までの活動で感じたことや身についたことを活かし、すべての子どもが参加できる遊びを計画していきたいと思います。

私たちはこれまでの活動のなかで子どもや色覚障害のある方、聴覚障害のある方、身体障害のある方などさまざまな人の立場に立って考え、「とらちるだより」やYouTubeの動画、オペレッタなどを作成してきました。この力は、就職した際に子ども一人ひとりの個性に気づき、その良さを引き出せるような遊びを考える力につながっていくと思います。

それぞれの就職先で全力で頑張ります!!

学生メンバーへのインタビュー

Q.佐藤貴虎ゼミナールに入ったきっかけやりがいは?

将来、保育士や医療保育士として小さい子どもの役に立つ仕事をしたいと思い、医療保育について学ぶことができる佐藤貴虎ゼミに入りました。

重症心身障がい児施設へ訪問し実際に障がいを持つ子どもと関わったり、入院している子やそのきょうだいを含め全員に楽しんでもらうことができるような動画をYouTubeで配信をしたりする活動の中で、病気の子どもたちや障がいを持っている子どもたちにあった保育の仕方を考えることがやりがいです。

実際に障がいを持っている子と関わったことを通して、医療保育士として子どもたちのために働きたいという気持ちがより一層強くなりました。

もともと医療保育に興味を持っていて、とらゼミに入りたいと思っていました。保育士になりたいという思いを持ちながら小学生・中学生を送る中で、中学生の時に入院を経験して、医療に興味を持ちました。

看護師にも憧れを持っていた時もあったのですが、その時に医療保育というものを知って良いなと感じました。

貴虎先生の新聞が親戚から送られてきて、その新聞に書かれていた”北海道こどもホスピス”の内容がとても心に響きました。自分にもできることがあったらと思ったのがきっかけでした。

自分自身が生まれた時から入院・通院を続けていて、そこの先生から医療保育を勧められました。

実際にこの大学にきたいと思ったのは、出身高校と旭川市立大学が連携していて、その時に貴虎先生のゼミのお話を聞いて入りたいなと思いました。

小さな時から子どもと関わることは多く保育系の活動に興味は持っていました。子どもと関わることがしたいと思い、保育系を学べる大学を調べる中でこの大学が医療保育を学べることを知って、自分のやりたい仕事ができるのではないかと思って入りました。

医療保育を目指しているわけではないのですが、貴虎先生のキャラクターにひかれて入りました。障がい者という分野にはずっと興味があったので、何か学べることがあるかなと思います。

中学生の時からボランティア活動などで子どもや障害のある方々と関わる機会がありました。その中で障害のある方々のスポーツなどを行うときは「イベント」として行われていることに違和感を感じました。

この経験を通して、「イベント」という特別な形ではなく日常のなかであたりまえに障害のない人々と同じ経験をしてほしいと思いました。そして、小学生の時から人を支える仕事をしたいと思っており、ふと「医療現場で働く保育士はいないのか?」と考え、調べたことがきっかけで医療保育士について知ったことがこのゼミに入ったきっかけです。

家族の入院経験や、中・高校で保育のDVDを見た経験から自分も保育者として子どもたちを助けてあげたいと思い、医療保育士を目指しました。

子どもたちを笑顔にしたいという気持ちが強くて、保育者の道を選びました。入学当初は医療保育士のことをよく知りませんでしたが、この分野にとても興味がありとらゼミに入りました。

Q.活動を続けるモチベーションや、嬉しく感じたことは?

ボランティアで行うペープサートやオペレッタなどの準備で先が見えないと大変なことが多いですが、完成が見えてきた時が一番楽しくて、成長できる時なのかなと思います。

みんなで一緒に頑張っていることが日々のモチベーションです。

子どもと関わる職業に就きたいという気持ちが強いからこそ、ボランティアや実習を続けられているのだと思います。また、実習で「先生、大好き」と言ってもらえたことはとてもモチベーションの維持につながりました。

実習やボランティアを通して、子どもたちの笑顔が見られるところです。

子どもの成長が少しでも見られるところです。また、とらゼミの活動が楽しく周りのゼミ生の方々が支えてくださるところです。

実習などで保育者の動きなどを観察したり、子どもたちと触れ合ったりする中でさまざまな学びがあるところです。

今まで子どもと関わる機会が少なかったため、実習やボランティアでの子どもたちとの交流が新鮮で楽しいところです。

Q.障がい児との触れ合いで、どんな学びがありますか?

私たちはゼミの活動を通して、医療保育について学んでいます。重症心身障がい児施設への訪問をして、子どもたちの様子や、重症心身障がい児への保育、医療的ケアの様子を見学しました。

コロナ禍に動画や写真で学習してきましたが、それでもやはり実際に触れ合ってみて初めて分かることは非常に多かったです。

子どもたちとのコミュニケーションの仕方が印象に残っています。

私たちは、障がいを持つ子どもたちとの初めてのかかわりで、戸惑っていました。そうしていると施設の先生に、「近くにいるだけでも子どもたちに安心感を与えられる」というアドバイスをいただきました。

とても素敵な考え方だと感じ、このアドバイスを基に試行錯誤していきました。遊びを通して近くに寄り添い、子どもたちとの距離を縮めることができました。

想像以上に障がいを持つ子どもたちの表情や感情はとても伝わりやすいということが印象に残っています。

施設に訪問した際、歯磨きをするときに泣いている子どもを見かけました。その光景に微笑ましさを感じるとともに、しっかりと声を上げて気持ちが伝わってくる力強さに驚きも感じました。

普段から、目線や動きをよく観察してあげることは大切にしていますが、気持ちが伝わるからこそ、何よりも笑顔で接することの大切さだということを再確認しました。

「コミュニケーションの仕方」「表情や感情」の2つはとても大きな学び・発見で、私たちの成長につながったと感じています。

私たちは、人の役に立ちたいという思いを胸に、ゼミを通じて医療保育についての活動、学習をしています。重症心身障がい児施設へ訪問して、子どもたちとのコミュニケーションをする中で、さらに医療保育への関心が高まりました。

医療保育について大学で学び、今後はYouTube活動やオペレッタ披露、手話歌のように、施設にも普段私たちが楽しく作っている遊びも取り入れながら、さらに施設訪問の機会を増やしていきたいです。

Q.どんなことを心がけていますか?

私たちのゼミでは、楽しく活動することを一番大切にして活動に取り組んでいます。私たち自身が楽しんで活動することによって、子どもたちも楽しんでくれることに繋がっていると考えています。

ゼミでの活動以外でもみんなでお出かけしたり、ご飯を食べたりして楽しく、仲良く過ごしています。ゼミのメンバー皆で協力し合い、失敗してもフォローしあうことで新しい活動にも積極的に取り組むことができています。

全員同い年ということもあり、自分の意見を言いやすく、一人一人の意見を尊重しながらよりよい活動をすることができるように心がけています。

病気の子どもたちだけではなく、子どもたち全員が楽しむことができる活動になるように意識しています。

私たちがゼミ活動をするうえで心がけていることは将来保育者になるために必要な事でもあるため、日々学びながら夢に向かって頑張っています。

Q.どんなことに気を付けていますか?

子どもと私たち大人とでは身長差があり、立ったまま話すと子どもは威圧的に感じてしまい怖いという気持ちにさせてしまいます。そのため、子どもと関わるときにはしゃがんで目線を合わせ安心感を与えることができるように心がけています。

動きを付けて話すことによって伝わりやすくなるように工夫をしています。常に笑顔を忘れずに子どもたちを関わるようにしていて、楽しいと感じてもらうことができるように気を付けています。

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