【Report】- Day1 -「第1回 病気療養中の子どもたちと学生がつくる、”学びの場”について考えるフォーラム」

2023年10月7日(土)~10月8日(日)慶應義塾大学で開催した「第1回 病気療養中の子どもたちと学生がつくる、”学びの場”について考えるフォーラム」のフォトレポート – Day1 – です。

このページの内容

– フォーラムの概要 –

フォーラムの概要について

「全国どこの病院に入院しても、いつでも、だれでも“学びの場”に集える社会の実現に向けて」という想いのもと、2023年4月からNPO法人 Your School慶應義塾大学 秋山美紀研究会埼玉医科大学 総合医療センター 緩和医療科の共同プロジェクトとしてはじまったこの取り組み。プロジェクトメンバーが全国各地を訪問し、病気療養中の子どもたちと学びの場づくりに取り組む学生さんのお話を伺い、それぞれの取り組みを学ぶという活動からはじまりました。

フォーラムの案内文にも記したとおり、元々はコロナ禍に、Your School主催で毎月1回、オンラインで開催されていた交流会から生まれたという学生同士のつながり。全16回と会を重ねるうちに「子どもたちのより良い”学びの場づくり”のために、もっと横のつながりを深め、お互いに協力していきたい」という声が生まれ、この共同プロジェクトに発展しています。

プロジェクトメンバーが各団体を訪問してお話を伺うなかで「訪問先の学生をはじめ、教育・医療関係者が集まり、各団体の活動内容や課題などを共有し、子どもたちとのより良い“学びの場”を一緒に探ってゆけたら」と、オンラインを飛び出して初めて対面で集う場として、クローズドなワークショップとオープンなフォーラムから成る2日間のプログラムを企画しました。

フォーラムのプログラムについて

フォーラムは「Day1 – Workshop -」と「Day2 – forum -」の2日間のプログラムです。

※内容は毎年少しずつ異なります。

Day1 学生のみのワークショップ

Day1は学生のみのクローズドなプログラムです。

学生のみなさんがお互いの団体の活動を知りあいよいところをみつけあうワークショップや、心や身体を動かしながら「関わり」について考えるワークショップを中心に、学生同士が知りあいつながりあうような時間が中心となっています。

Day2 フォーラム

Day2は「第1回 病気療養中の子どもたちと学生がつくる、”学びの場”について考えるフォーラム」として、会場に各団体のブースをつくり、活動展示やフォーラムでの活動紹介を行います。

さらには子どもたちの学びに関わり、この共同プロジェクトに賛同し応援するゲストスピーカーを迎えて”学びの場”について考える時間を持ち、会場やオンラインでフォーラムに参加してくださっているみなさんとも交流します。

このフォトポートでは、フォーラムの2日間に流れていた空気を読み手のみなさんにも感じていただるように、「撮影係」を担当した“みっちゃん”の視点からみえた参加者のみなさんの様子を写真と文章でお届けします。

Day1– Workshop – の様子

会場設営の様子

撮影係の集合は、朝10時の田町駅。今回の企画を見守り支えてこられたYour Schoolの理事でもある昭和大学大学院 保健医療学研究科・昭和大学附属病院内学級担当の副島賢和さん(そえじさん)、埼玉医科大学 総合医療センター 緩和医療科・呼吸器外科の儀賀理暁さんと駅で待ち合わせて、2日間の会場となる慶應義塾大学三田キャンパスへ。

会場に着くと、教室内では企画・運営メンバーであるYour Schoolのみなさんと秋山美紀研究会 チルドレンケアラー班のみなさんが設営をはじめていました。メンバーの中には、全国から集う学生のみなさんを最寄りの空港や駅まで迎えに行かれている方もいて、遠方からでも初めてでも、少しでも安心して来てもらえるようにという細やかな心配りを感じました。

時折、教室に響く「無事合流できたみたい」という声に一緒にほっとしながら、会場準備が進みます。


隣りあう2つの教室の片方は前半の学生企画“ミッケ”のワークの会場、もう1つの教室は後半のそえじさんのワークの会場。どちらの会場でも、椅子や机の置き方からネームプレートの並べ方まで、何度も配置を変えながら調整作業が続きます。

誰もいない教室の静かな空間をじっとみつめながら、まだそこにはいない、でももうすぐここに集う一人ひとりを想いながら……「この空間で、今日という日をともに過ごすみなさんにとって、少しでもよい時間になるように」と、それぞれの場所でギリギリまで悩みながら、微細な調整を重ねて準備をしていました。

そのまなざしやあり方をそばで感じるだけでも、言葉をこえた学びに満ちたひとときでした。

参加団体の紹介・アイスブレークの様子

そして迎えた14時の開会。第1回は「旭川市立短期大学部 佐藤ゼミナール」(北海道)、「秋田大学 病児学習サポートボランティアサークル」(秋田)、「東北大学 高校生学習支援サークル」(宮城)、「NPO法人 Your School」(東京)「慶應義塾大学 秋山美紀研究会チルドレンケアラー班」(東京)、「大阪教育大学 西遊子」(大阪)、「NPO法人 未来ISSEY グッドブラザー」(香川)、「愛媛大学医学部 Children Supporters」(愛媛)、「認定NPO法人 ポケットサポート」(岡山)と全国から9つの団体の学生が集まりました。

「はじまり」に相応しい緊張の混じった静かな空気も、アイスブレークの小さなワークの積み重ねで少しずつあたたまってゆきます。

写真をもっと見る

相手の声に耳を澄ましながら柔らかなまなざしで頷く姿に、みなさんの日々の活動でこのまなざしの先にいる子どもたちの姿を重ねながら、そのまなざしをこのレポートを読むみなさんにも感じていただけたらという気持ちでそっと写真におさめました。

何より一番驚いたのは、これだけの学生さんたちが小さな教室にぎゅっと集まっているのに、びっくりさせられるような角の尖った声や音や動きがなかったこと。病院という空間で病気療養中の子どもたちと関わるみなさんにとっては当たり前のあり方なのかもしれませんが、「すごいなぁ」と、教室の後ろでちいさく感動していました。

Workshop1 ミッケ
すてきなところを見つけ、伝えあう

場もあたたまってきたところで、次にはじまったのは「ミッケ」と名付けられた「すてきなことを見つけ、伝えあう」ワーク。この数か月間、各団体を訪問してお話を伺ったプロジェクトメンバーが作成した各団体の「レポート」が1グループに1団体ずつ授けられ、そのレポートをグループのメンバーで読みながら「すてきだな」と思ったところを付箋に書きだし共有してゆくという試みでした。

机上のレポートの団体メンバーは、そのグループには含まれていないという細やかなチーム分け。「誰か」の大切な活動を、インタビューという行為を通して受けとった「別の誰か」がまとめたレポートに綴った言葉から、そのレポートを読んだ「別の誰か」が言葉を掬い上げ、そこから何かを紡いでゆく。

伝言ゲームよりもうんと難しそうな、思いやりと想像力と関わりでつなぎ紡ぐバトンリレー。紡がれた先に何が生まれるのだろうかと、机の上に綴られてゆく色とりどりの言葉をみつめながら、その様子をそっと見守っていました。

写真をもっと見る

言葉……特に書き言葉のバトンというものは、受けとり綴りなおす側に相手を想う心がなければ、人を介すほどにどんどん「その人」の「本当」から離れ、無機質なテキスト・情報の寄せ集めになってしまうことがあります。

バトンを受けとりつなぐ難しさは、このワークを通して「伝える」側を体験したみなさんが一番感じられたことかもしれません。でも、この教室の机の上に浮かんでいる綴られた言葉を見つめていると、不思議とその言葉を綴ったお一人おひとりのまなざしが宿り、声がきこえてくるような生身の人間のぬくもりがありました。

ワークの途中、儀賀さんに「不思議とその人(付箋コメントを書いた人)のまなざしと声がきこえてきますね」と呟くと「ほんとにそう!」とうれしいひと声。日々の活動を通して、さまざまなことをみつめ、きき、考えておられるみなさんだからこと、些細なテキストからしっかりと言葉を掬い上げ「自分の声」を重ねて紡ぐことができるのかもしれません。

写真をもっと見る

次に、綴った言葉をグループ内で共有しながらみんなで話しあい、その団体の活動やすてきなところをみんなに「伝える」内容を考えます。そしてグループごとに各団体の紹介を発表して、そのバトンを受けとった各団体の学生さんがみなさんからの声をもとに発言するという発表が続きます。

発表のスタイルも、どのグループもみなさんお一人ずつマイクをまわしてみんなで発表していた姿が印象的でした。「みんなで」の少し手前にある「無理のない範囲で一緒に」くらいの空気感。グループからグループへのバトンをつなぐ司会のお二人も、それぞれの発表に対して自分が感じたことをひと声添えて「あなたの発表を受けとりました」というサインを手渡しながらバトンを渡していて、そんな心配りも助けになっていたのかもしれません。

「誰かの大切なものをみつめて、伝える」という体験と「誰かにみつめられた“わたしたちの姿”」をきくという体験、みなさんはどんなことを感じられたでしょうか? 自分では気づかなかったような気付きを得たこともあれば、何か問いが浮かんだり、深まったりしたこともあるかもしれません。ぜひ、このワークを通してみなさんの感じられたことを聴かせていただけたらうれしいです。

Workshop2
相手を大切にする関わりを考える

続いては休憩を挟んで隣の教室へ移動して、そえじさんのワークショップの時間に。

「相手を大切にする関わり」「自分も相手も大切にする関わり」という言葉のもと、みなさんが身体を動かし、心を動かし、それを味わい感じあうような時間。その場の、その瞬間の、その人の中から微かにたちあわられる繊細で儚い一度きりのかけがえのない何かが、教室のなかのあちらこちらに立ち現れていました。

写真におさめてよいものか迷いながらも、このプログラムの開催記録として最低限に留めて撮影をしましたが、ファインダーを覗いてはっとした瞬間が2度ありました。

ひとつは2人1組で行うあるワークで「2人が一番離れた瞬間が、一番近くに感じた」というような瞬間があったこと。その経過を写真という術で1枚ずつ真空パックしたからこそ、見つめなおして比較し感じることができた「瞬間」でした。


もうひとつは「ファインダーを覗いたその先に、その人が関わってこられたのかもしれない子どもたちの姿が重なった」と感じた瞬間があったこと。これは「この瞬間は記録写真であっても撮ってはいけないな」と感じ、そっとレンズをおろしてそこからはしばらく撮影をやめました。

ワークショップのあと、撮影を迷っていたことと、撮ってはいけないと感じた瞬間にレンズを向けてしまった後悔をそえじさんにお伝えしました。そえじさんはワークショップ中に「そのわたし」にも気づいてくださっていて、後悔も含めてそっと受けとめてくださいました。その場のどんな些細な、目には見えづらい変化も見逃さない、そえじさんのまなざしとあり方から学んだことを、わたしも大切にしたいと思いました。

このワークショップ中に限らず、カメラがあったことでみなさんにも少なからずの緊張や圧を与えてしまっていたと思います。

役割とはいえ申し訳ない気持ちでいっぱいですが、願わくば月日が経って「その瞬間」の気持ちを呼び起こしたくなった時に、味わいなおすための呼び水として。もしくはこの場には来れなかった仲間にみなさんが伝えたい、分かちあいたい時の助けになればと思い、ワークショップの写真も少しだけ置かせていただきます。

そえじさんのワークを見守りながら印象的だったのは、みなさんがご自身の心と身体で感じて、その中からご自身でささやかな学びの種をひと欠片ずつ掬い上げ、味わっている姿でした。

「教えてもらう」のではなく「自ら学ぶ」。これが「学びの場」のあり方なのかもしれないなと。そんなかけがえのない瞬間に立ち会う機会をいただき、とても豊かな時間でした。


そえじさんのワークが終わる頃には窓の外はすっかり真っ暗。はじまりの部屋に戻り、今日一日を振り返りました。

この時間もシャッターを押せないくらいの繊細な空気が流れていたので写真は記録としてほんの少しですが、みなさんお一人おひとりが今日楽しかったことや学んだこと、これから大切にしたいこと、考えていきたいこと、したいこと、生かしたいことを綴っていたのが印象的でした。

最後に、一日かけて撮影して感じていたのが、学生のみなさんとこの日をともに過ごした先生方…そえじさん、儀賀さん、慶應義塾大学 環境情報学部・健康マネジメント研究科の秋山美紀さん、そして各地から駆けつけてくださった秋田大学大学院 教育学研究科の藤井慶博さん、旭川市立大学短期大学部の佐藤貴虎さん、愛媛大学大学院 教育学研究科の樫木暢子さん、そして取材に来られていた朝日新聞社の上野創さんのまなざしでした。

学生たちの後ろからそっと見守りその想いに耳を澄ましながら、時に時に必要な「問い」を置いたり、時に一緒に身体も動かしかり。そんなみなさんの姿を撮影者としておさめながら、学生たちの活動を「支える大人」の存在の大切さを感じました。

もっともっと、ここに集う学生たちを支え、応援する大人が増えてゆくことを願いながら、Day1のレポートの結びとさせていただきます。

Day2– Forum – の様子

このページの内容