【Report】- Day1 -「第2回 病気療養中の子どもたちと学生がつくる、”学びの場”について考えるフォーラム」

2024年10月12日(土)~10月13日(日)慶應義塾大学で開催した「第2回 病気療養中の子どもたちと学生がつくる、”学びの場”について考えるフォーラム」のフォトレポート – Day1 – です。

このページの内容

– フォーラムの概要 –

フォーラムの概要について

「全国どこの病院に入院しても、いつでも、だれでも“学びの場”に集える社会の実現に向けて」という想いのもと、2023年4月からNPO法人 Your School慶應義塾大学 秋山美紀研究会埼玉医科大学 総合医療センター 緩和医療科の共同プロジェクトとしてはじまったこの取り組み。プロジェクトメンバーが全国各地を訪問し、病気療養中の子どもたちと学びの場づくりに取り組む学生さんのお話を伺い、それぞれの取り組みを学ぶという活動からはじまりました。

第1回フォーラムの案内文にも記したとおり、元々はコロナ禍に、Your School主催で毎月1回、オンラインで開催されていた交流会から生まれたという学生同士のつながり。全16回と会を重ねるうちに「子どもたちのより良い”学びの場づくり”のために、もっと横のつながりを深め、お互いに協力していきたい」という声が生まれ、この共同プロジェクトに発展しています。

プロジェクトメンバーが各団体を訪問してお話を伺うなかで「訪問先の学生をはじめ、教育・医療関係者が集まり、各団体の活動内容や課題などを共有し、子どもたちとのより良い“学びの場”を一緒に探ってゆけたら」と、オンラインを飛び出して初めて対面で集う場として、クローズドなワークショップとオープンなフォーラムから成る2日間のプログラムを企画しました。

フォーラムのプログラムについて

フォーラムは「Day1 – Workshop -」と「Day2 – forum -」の2日間のプログラムです。

※内容は毎年少しずつ異なります。

Day1 学生のみのワークショップ

Day1は学生のみのクローズドなプログラムです。学生のみなさんがお互いの団体の活動を知りあいよいところをみつけあうワークショップや、ひとつの事例をみつめながら子どもたちとの「関わり」について考えるワークショップを中心に、学生同士が知りあいつながりあうような時間が中心となっています。

Day2 フォーラム

Day2は「第2回 病気療養中の子どもたちと学生がつくる、”学びの場”について考えるフォーラム」として、フォーラムの会場に各団体のブースをつくり、活動展示を行いました。

今年のフォーラムでは各団体の紹介に加えて、4団体をピックアップして活動についてじっくりとお話を伺い、医療や教育に関わる大人の登壇者を交えてディスカッションを深めるプログラムもあり、より学生さんたちの今の想いや活動に光が当たる時間だったように思います。

第2回となる今年のフォーラムの参加者向けの「しおり」には、「フォーラムにこめた願い」という題で、こんなメッセージが綴られていました。

みなさんこんにちは。

「全国の病気療養中の⼦どもたちが、いつでも、どこでも”学びの場”に集える社会の実現に向けて」という想いのもと、このフォーラムは2回⽬の開催を迎えます。

今年は全国から12の団体・⼤学に所属する学⽣さんが参加してくださる予定です。教育・医療・保育・⼼理などの「枠」を超えて、さまざまな視点から病気療養中の⼦どもたちの”学びの場”についてみなさんと⼀緒に⾒つめ合う2⽇間にできたら嬉しいです。

地域を超えてみなさん同⼠が交流を深めながら、お互いの活動を紹介したり悩みを共有する中で、今後の活動をより良くしていくためのヒントをたくさん吸収して、ぜひみんなの「ポケット」がいっぱいになった状態で最終⽇を迎えてください。

そして、このフォーラムを通じて、いま⼦どもたちに必要とされていることと・⾃分たちにできることは何かを⼀緒に考え、これからみんなでまた⼀歩を踏み出すきっかけになればと考えています。

10⽉にみなさんと対⾯でお会いできることを⼼から楽しみにしています。

根底に流れる想いは第1回から変わらず、でも昨年からまたひとつ「これからの一歩」になるように。そんな願いを感じるメッセージとともに、全国から学生が集いました。

このフォトポートでは、フォーラムの2日間に流れていた空気を読み手のみなさんにも感じていただるように、第1回に続き「撮影係」を担当した“みっちゃん”の視点からみえた参加者のみなさんの様子を写真と文章でお届けします。

Day1– Workshop – の様子

会場は、今年も慶應義塾大学三田キャンパス。

初年度だった昨年はYour Schoolのメンバーのみなさんと秋山美紀研究会 チルドレンケアラー班のメンバーのみなさんが中心となり、さまざまな事前準備や当日の進行を担い、全国から集う学生のみなさんをお迎えするようなかたちでのはじまりでした。

今年は少し違っていて、準備段階からフォーラムに参加する各団体さんのアイデアや力も借りながら一緒に準備を進めてきました。今年のフォーラムをよりよくするためにアイデアを出しあったり、より深く交流できるようにフォーラムのしおりや参加する学生さんの自己紹介をまとめた冊子も各団体が協力して作成したり。1年ぶりに集まったみなさんの様子からも、フォーラムに向けて学生さん同士が重ねてきた時間や関わりをほんのり感じるはじまりとなりました。

会場の設営も、今年はみんなで一緒に。前半の学生企画のワークの会場と後半の副島先生のワークの会場で2つの教室に分かれて準備をすすめました。

机や椅子を少しずつ動かしながら「いつもの教室」を「今日みんなで過ごすための空間」に設えながら。フォーラムの協力者として参加していた医療や教育・保育に関わる大人のメンバーのみなさんのサポートもあり、今年の空間も無事整いました。

みんなで楽しいランチ ~オープニングの様子

設営のあとは「みんなで楽しいランチ」の時間。全国から集まった12の団体の学生さんが、お弁当を片手に自己紹介を交えて少しずつお互いを知り合います。

  • 「旭川市立大学 短期大学部 佐藤貴⻁ゼミナール」(北海道)
  • 「秋田大学 病児学習サポートボランティアサークル」(秋田)
  • 「東北大学 高校生学習支援サークル」(宮城)(※)
  • 「NPO法人 Your School」(東京)
  • 「昭和⼤学 ボランティアサークル さうもす」(東京)
  • 「慶應義塾大学 秋山美紀研究会」(東京)
  • 「静岡⼤学 ⽯川研究室」(静岡)
  • 「京都⼥⼦⼤学 発達教育学部」(京都)
  • 「大阪教育大学 西遊子」(大阪)
  • 「認定NPO法人 ポケットサポート」(岡山)
  • 「NPO法人 未来ISSEY グッドブラザー」(香川)
  • 「愛媛大学医学部 Children Supporters」(愛媛)

    ※東北大学 高校生学習支援サークルさんは今回Day2の展示のみのご参加

昨年に引き続き参加されている団体もあれば、初参加の団体もあり、同じ団体でも昨年とは違う学生さんが参加していることも多く、はじめましてのフレッシュな会話があちこちで響くランチタイムでした。

専攻している学問も、医療・教育・保育などさまざまで、学年も1年生から大学院生まで。共通点である子どもたちと関わるそれぞれの活動についてはもちろん、大学の授業や寮生活の話、アルバイトや実習・就職活動・暮らしている街の事情など、普段は中々交流することがない他の大学や都道府県、専攻の学生同士で学生生活について、みなさん興味津々に質問しあって違いや共通点を見つけていました。

今年はワークショップの前に、2日間を通して考えてもらいたい「5つの質問」が記されたシートも配られました。

Q.ここまでの時間を過ごして、感じたこと・考えたことを教えてください
Q.このフォーラムで全国のメンバーとどのような「関わり」がありましたか?
Q.みんなにとってこのフォーラムはどんな「場」ですか?
Q.今回のフォーラムに参加できなかったメンバーに伝えたいこと、一緒にやってみたいことを教えてください。
Q.このフォーラムの「なまえ」をつけるとしたら…?

参加者のみなさんが感じたことや考えたことを種に、これからのあり方を一緒に考え、育てていきたい。そんな想いを最初に手渡して、2日間のプログラムがはじまりました。

Workshop1 ミッケ
すてきなところを見つけ、伝えあう

Day1最初のワークショップは、昨年と同じ「ミッケ」と名付けられた「すてきなことを見つけ、伝えあう」ワーク。

フォーラムに参加する各団体が事前にお互いにインタビューを行い、1団体につき1枚レポートを作成しています。ワークショップではそのレポートを活用して、それぞれの団体の活動や支援方法の良いところ、気になるところを共有してゆきます。

初参加の団体にとってははじめてのレポート。昨年に続いて参加した団体もこの1年で新しくはじめた取り組みやこれからやりたいことなどが綴られていて、みなさんの「これまで」と「いま」そして「これから」が会場いっぱいに広がっていました。

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「ミッケ」では、11のグループに分かれて、各グループ1団体のレポートの内容を読みながら各々のメンバーがその団体や取り組みについて「すてきだな」と感じたことや「もっと聞いてみたい」と気になったところを付箋に綴り、共有してゆきます。

「名前の由来が知りたい」
「こども主体という考え方」
「ポジティブな言葉をつかう」
「はじめたらぜひ見たい!」
「学習だけではなく 子どもたちの話を聴くこと自体も支援の一部」
「在籍校の先生との連携」

同じレポートをみつめても感じることはそれぞれで、付箋に綴った言葉に宿るそれぞれの視点や想いを、一つずつ伝えあい、聴きあって共有してゆきます。

今年も感じたのは、教室に満ちるほどよい響きあい。60名近くの学生さんがぎゅっと一つの教室に集まっているにも関わらず、相手の声がちゃんと聴こえます。それはきっと、子どもたちとの日々の関わりの中で、同じ空間に集う人たちにとって心地の良い場の空気をつくることや、目の前の相手のささやかな表現も見逃さず、聴き逃さずにいようと大切にされていることの表れなのかもしれません。

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グループ内で見つけたことを共有した後は、各グループごとにそのレポートの団体について見つけたことを発表し、レポートの団体の方が質問などに答えるという交換が続きます。

「子どもたちの学びに関わる」という共通点があるからこその深い質問も多く「もっと知りたい」という気持ちが伝わってきます。その問いかけに対する各団体の回答を真剣なまなざして見つめたり熱心にメモをとったりしている様子からも「この場で得たものを持ち帰って仲間に伝えて自分たちの活動に生かしたい」というみなさんの熱意を感じました。

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Workshop2
事例検討会

Day1 2つ目のワークショップも、昨年に引き続きYour Schoolの理事でもある昭和大学大学院 保健医療学研究科、昭和大学附属病院内学級担当の副島賢和さん(そえじさん)のワークショップの時間。

昨年は「相手を大切にする関わりを考える」という言葉のもと、みなさんが身体を動かし、心を動かし、それを味わい感じあいながら子どもたちとの関わりで大切にしたいことを自ら学ぶような時間でした。

今年は「事例検討会」というかたちで、昨年はフォーラムのゲストスピーカーとして参加してくださった名古屋大学医学部付属病院 認定チャイルド・ライフ・スペシャリストの佐々木美和さんを迎え、佐々木さんから病気で治療中の子どものごきょうだいに焦点を当てた事例を共有いただき、そのきょうだいがどんな状況で気持ちなのかを想像しながら、どう関わってゆくのかを一緒に考える時間となりました。

はじめに、そえじさんが学生のみなさんに手渡したのは

当事者意識
自分ごと化

ということばでした。

さまざまな状況の中、いろんな気持ちを抱えている子どもたちと関わる上でとても大切なことですが、大切だと分かっていても「具体的にどうしたらできるの?」という迷いを抱える人も多いかもしれません。

そえじさんのワークは、まず佐々木さんからきょうだいについての「情報」をいくつかご共有いただき、そこからその子について気になることを、学生たちから質問してもらうという時間からはじまりました。


その子が好きなこと、学校のこと、きょうだいが病気になる前の様子、家族との様子…しんと静まった教室にひとつ手が挙がっては一つの質問が響きます。そしてその質問に対する答えが佐々木さんから語られるたびに、その子がいろんな角度から照らされて、最初はなかなか見えなかったその子の輪郭が少しずつ浮かび上がってくるようでした。

「どんな様子なんだろう?どんな気持ちなんだろう?」という他者のまなざしが、暗闇の中にあるその子に光を当ててくれる。その子が内側に抱えているつらさそのものは照らせなくても、そのつらさの輪郭をみつめ、思いやる力でともに感じようとすることはできるのかもしれない。学生のみなさんの問いに、そんな気づきをいただいた時間でした。


問いを共有した後は、その子が抱えているであろう「つらさ」や今の気持ちをより丁寧に見つめて、その子に対して病院内や地域の専門職・大人たちがどんな風に関わることができるのか、具体的に考えてゆく時間にうつりました。

この過程についてはワークショップに参加し、あの場と時間を共有したみなさんだけの宝物だなと感じたので具体的なレポートは控えますが、その子のつらさを想像する時間も、その子との関わりを考える時間も、撮影係としてファインダーを覗くきながら、みなさんのまなざしに「もしわたしなら」という真摯なひかりを感じる瞬間がたくさんありました。

その「わたし」こそが、当事者意識なのかもしれないなと。そんな学生のみなさんの様子をみつめるそえじさんや佐々木さんの表情も追いながら、わたし自身も大切なことを教わった時間となりました。

そんなみなさんの「ひかり」を捉えられたかどうかはわかりませんが、ともに過ごし感じあった時間のしるしとして、そしてこのワークショップには参加できなかった仲間に学んだことを伝えて分かちう時の助けとして、ワークショップの写真も少しだけ残しておきます。

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なんでも質問⼤会

2つのワークが終わる頃には窓の外はすっかり真っ暗でしたが、今年は最後に「なんでも質問⼤会」というプログラムも加わりました。

子どもたちと関わる日々の活動で感じていることを、このフォーラムにご協力くださっている大人の専門職のみなさんに質問したいという参加学生さんからの声ではじまった企画とのこと。事前に募集された質問から1問ずつ、大人のみなさんに質問が投げかけられます。

「病気の療養中の子どもたちの学びのために」という共通の想いはありながらも、教育や医療など異なる専門領域のまなざしを持つ大人のみなさんからの回答には、それぞれの学問が持つものの見方や感じ方、そしてお一人おひとりがその領域を歩んでこられたキャリアで培ってこられてものが宿っていて、それらを同時に感じ、学ぶことができるこのフォーラムはあらためて豊かな学びの場だなと思いました。


おわりに

最後に、今年も学生のみなさんとこの日をともに過ごしてくださった大人のみなさんのまなざしも、フォーラムのひとつの記憶として残しておきます。

ワークショップの時間をともにしてくださった副島賢和さん、佐々木美和さん。そしてこのフォーラムの共催として関わってくださっている埼玉医科大学 総合医療センター 緩和医療科・呼吸器外科の儀賀理暁さん、慶應義塾大学 環境情報学部・健康マネジメント研究科の秋山美紀さん。

参加学生と一緒に各地から駆けつけてくださった旭川市立大学短期大学部の佐藤貴虎さん、京都女子大学 発達教育学部 教育学科の滝川国芳さん、そして昨年に引き続き学生たちの取り組みに関心を寄せて取材に来てくださった朝日新聞社の上野創さん、フォーラムの様子を撮影してくださった長山雅之さん、三宅流さん。

フォーラムは学生主体で企画・運営していますが、学生のみなさんの「やってみたい」「学びたい」という気持ちや活動を見守り、支え、ともに学びあう大人のみなさんの存在が、このフォーラムに集った学生のみなさんが安心して学び、力を蓄えてそれぞれの活動に戻ってゆく助けになっているのだろうとも感じます。

もっともっと学生たちを支え・応援する大人が増えてゆくことを今年も願いながら、Day1のレポートの結びとさせていただきます。

Day2– Forum – の様子

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